#おかしぃオーディオ

オーディオ製品の感想を書いていきます。たぶん

final ZE8000 MK2 レビュー

finalのZE8000 MK2とかいう完全ワイヤレスイヤホンを買ってしまったのでレビューという名の感想を書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

購入経緯

私は普段UE-RRっていうカスタムIEMを使ってて音質はもちろんのこと遮音性が高くそれでいて装着感も良くて日常的に愛用しているんですが、難点があるとすれば寝ながら聴くときに重力で耳の形が変わるせいか上手く耳にフィットしなくなり遮音性が悪くなってしまうってのがあります。カスタムIEMは寝ながら使うことは想定されてないはずなので使い方が悪いと言われればそれまでですが横になって使えないとなると他のイヤホンを使う他なく、寝ながらなのでそこまで音質にこだわっても仕方がないかとagってトコのCOTSUBUのワイヤレスイヤホンを使ってましたがその内もうちょい音質にこだわっても良いかなと新たにイヤホン探しの旅に出ていつものイヤホン屋さんで試聴したところ同じメーカー(agはfinalの別ブランドです)のZE8000MK2を買いました。

final

手ブレ酷いですが、本社ショールーム入り口です

finalは神奈川県川崎市にある国内メーカーです。(私の記憶が確かならば)元々はスピーカーとか作ってた小規模のガレージメーカー*1が2009年ごろに突如イヤホンを出して、しかもそれがめっちゃ奇抜でクロム銅削り出しでイヤーピースも金属製で価格も20万円近くと当時として異例の高価とあってとにかくその奇抜さで話題になりました。その後も継続的に新製品を出して、開発の傍ら雑誌の付録としてイヤホンを出すなど広報活動にも精を出して、そして現在はハイエンド8000シリーズはイヤホン・ヘッドホン共に国内外で高く評価される一方で低価格帯のEシリーズはその価格帯の「定番」として多くのメディアで長らくおすすめに挙がっており、一大メーカーとして成長を遂げました。

とにかくオーディオに対しての研究に力をいれており、公式サイトにある各製品情報を見るとむしろ研究がてら製品を出している印象すらあります。ちなみに公式サイトにはfinal LABというコーナーがあってオーディオの基礎知識から製品開発のエピソードまで非常に多くの事が事細かに書かれてるので読んでてめっちゃタメになります。

final-inc.com

それと川崎の本社は一般向けのショールームもあって製品を試聴できる他、その場で製品を購入することもできます。私も行ってきましたが店内は落ち着いた雰囲気で試聴が捗りました。JR川崎駅改札出てから迷わなければ徒歩4分くらいで辿り着けた気がします(適当)。

ZE8000 MK2

「8K SOUND」をウリにした完全ワイヤレスイヤホン。8K映像の如く情報量を高め音の演出を不要にしたとありますが音声ソースはBluetoothで一応aptX Adaptive 96kHz対応ですがそれでも非可逆圧縮で情報量削られてるのに情報量を高めるとはこれいかに?なんて思うんですが製品情報や開発エピソードを読む限り、どうやら高性能なドライバーユニットの開発や本体内蔵のDSPを用いたデジタル補正を活用することで従来のイヤホンではマスクされていた音楽情報を引き出すことに成功!なので情報を補うような演出を加えなくてもよくなったッ!と勝手に解釈してます。間違ってるかもしれません。

製品名にMK2とあるように先代機ZE8000があるんですが、それに本体の内部構造やDSP補正の見直し、イヤーピース形状の改良などが加えられたのが本機です。実際に見てみましょう。

外観

外箱です。シンプルですが質感の良さが伺えます。for Audio Enthusiastsの文言がイカしますね。

本体と付属品です。独特な形状のイヤーピースが5サイズと出音ノズルに貼り付ける交換用フィルタとフィルタ貼り付ける際にぐしっと押し付ける為の金属棒が目を惹きます。

充電兼収納ケースは比較的大きめです。元々はZE8000でカスタムイヤーピースを作る予定があってそのために収納空間を大きめに作られたそうです*2。本体仕上げはシボ加工でなんだかお吸い物のお椀みたいですね。軽量なプラスチック製でありながら高級感があり、かつ実用面においては傷が目立ちにくい優秀なデザインだと思います。先代ZE8000と同じ形状ですが、ZE8000MK2では上面右下にローマ数字のⅡの如く2本斜線が加えられてます。

本体です。一部ではトンファーと形容されるように独特な形状をしています。こちらも先代と同じ形状ですがケースと同じく本体下部に2本斜線が入っており、イヤーピースも謎の小さなフィン付きのものに変更されてます。イヤーピースは耳道と耳介の2点でフィットするように設計されてます。なのでイヤーピース選びはこの2点がピッタリ合うサイズを選ぶのが肝要です。大きすぎると耳の深くまで入らずにグラグラして装着感だけでなく音質的にも不安定な状態となりますし、小さすぎると隙間が出来て遮音性が損なわれて低音も逃げてスカスカなサウンドになって踏んだり蹴ったり泣きっ面に蜂状態で悲しみに包まれてしまいます。一応社外製のイヤーピースも着くことには着くんですが本体ノズルが短い上に返しも無いのですぐ外れちゃいます。

機能

音声を聴ける以外はアクティブノイズキャンセリングとながら聴き、ボイススルーってありがちな機能の他にウィンドノイズカットという風切音を低減する機能があって、ZE8000MK2の本体形状って耳からでっぱってて風切音が聞こえやすいのでこの機能を使えばかなり軽減されます。

アクティブNCの効きはそこまで強くありません。同価格帯のソニーとかテクニクスの方がよっぽど強いです。効きが強くないですが圧迫感やNCオンオフでの音質変化が少ないので私は基本的にずっとNCオンで使っています。

設定用のスマホアプリで「final connect」が用意されていて、NCモードの切り替えの他、イコライザーやガイドボイスの有無などの詳細設定、「8K SOUND+」のオンオフ等が弄くれます。「8K SOUND+」はデジタル補正の演算量を最大にしてより音の情報量を高める機能で、その分バッテリー持ちは悪くなるとのコト。

音質

DAPとPCでaptX、スマホでaptX Adaptive(48kHz)で聴いてみました。

全体的にどこかの音域が強調されてる感が無くてフラットで見通しの良い音、って感じです。アタックやディテールも大人しめに仕上げられており、パッと聴いた感じメリハリに欠いたフワフワした印象を抱きますがよく聴き込むと細かな音もしっかり再生されてる事がわかります。なんというか、音が遠い感覚がします。遠いといってもイヤホンですから頭内定位ですし、音場感も特別広いワケでもありません。アレですよ、音が鳴ってるスピーカーがあるとして、スピーカーユニットの直ぐ側まで耳を近づけてみると細かい音が鳴ってるのがハッキリと聴こえるようになります。従来のイヤホンヘッドホンもそういった細かい音がハッキリ聴こえるつくりになっています。それ故ヘッドホンイヤホンは音を虫眼鏡的に聴くなんて言われてたりするんですが、ZE8000MK2はそういう虫眼鏡的な強調がされていない…いわばスピーカーで聴いている感覚を再現している…かどうかは分かりませんが、そういうのがユニークな点だと思います。

欠点を挙げるなら強調感の無い音質、しかも遮音性がそこまで高くないので屋外の騒がしい場所で聴くとなると細かな音が掻き消されただただメリハリの無い音に聴こえてしまう点でしょうか。あとノリノリで聴きたい時とか。そういう場合はソニーテクニクスの方が力強く鳴らすので聴きごたえがあって良いかと思います。遮音性も高いですし。

ZE8000との比較

ZE8000MK2と聴き比べるとZE8000は厚い低音が目立ちます。出音そのものはZE8000MK2と大きく変わらないのですが、厚い低音のお陰でオケのティンパニのロールは地響きの如く迫力が感じられます。対してZE8000MK2は低音が抑えられて、見通しの良いクリアな印象です。モニター調とも言って良いかもしれません。

音質以外の点ではガイドボイスも変更されていて、ZE8000は落ち着いた喋り方だったのがZE8000MK2は若々しい声になっています。個人的には先代の方が頼もしさが感じられて好きですね~。

まとめ

ZE8000MK2は形状もそうですが音質面でも一味違った個性の強い製品だと思います。騒音下で聴いてもフワッフワな音でイマイチと思いがちかもしれませんが、静かな自室内とかで音に意識して聴くと細かな音がどんどん聴こえてきてその真価が発揮されるあたり、パッケージに書かれたfor Audio Enthusiastsの文言にも納得できます。

もし他人に勧めるなら、「普段はノイキャンつよつよのイヤホンを使ってて、これから音楽をじっくり聴こうと有線イヤホンとドングルDACを探している人」でしょうか。有線さがしてる人に無線を勧めるってのはどうかって話ですがZE8000MK2は単に線の無い便利イヤホンとして済ますのはもったいないと感じたからで、合う合わないはあると思いますがお店とかで見かけたらぜひ一度試聴してみてはいかがでしょうか。

買ってよかったです。

おわり

*1:この頃はfinal audio designって社名でした。2015年にfinalと改名。

*2:カスタムイヤーピースはZE8000ユーザー専用DSPチューニングサービスとともに提供予定でしたがサービス提供途中で付属イヤーピースの方が音質的に良好と判明して中止とのコト。こういう手探り感満載なところも研究熱心なfinalらしいといえますね