#おかしぃオーディオ

オーディオ製品の感想を書いていきます。たぶん

EarMen Angel レビュー

EarmenってメーカーのAngelって名前のポータブルDACアンプを買ってしまったのでレビューと言う名の感想を書きました。よろしくお願いします。

購入経緯

お店に置いてあった試聴機を何の気なしに聴いてみたらめっちゃ好みのサウンドだったのでめっちゃ欲しくなってその後何度と無く試聴を繰り返しても購入意欲が衰えなかったので買いました。予想外の出費に戦慄しました。

EarMen

(Ma)de in Serbia, Europe

ってのはセルビアAuris Audioの姉妹会社だそうで、会社自体はアメリカにあるんですが開発製造はAurisの方でやってるそうです。実質サブブランド的な存在で、Auris自体は真空管アンプやトーンアームなどのアナログ系の製品を作ってるのに対しEarMenはUSB-DACとかのハイテク系製品を出してます。Angelの開発者でありAngel本体にその名が記されてるFilip Tot氏はAuris製品も設計担当しているとのコト。それとEarMen製品の製造がすべてヨーロッパ(セルビア?)の工場で作られているのも特徴でしょうか。

スペック

DACチップはESSのES9038Q2Mを採用し768kHz32bit PCMとDSD512、それとMQAデコードにも対応。バランスで最大11.5Vrms、2250mW出力で、3000mAhバッテリーを2つ搭載してて最大8時間再生とのコト。ハイスペックっちゃハイスペックなんですがiFiとかFiiOでも似たようなもんなので突出してスゴイってワケでもありません。

 

外観

Angel本体と付属品

箱の中にはAngel本体とUSB C to Cケーブル、光角型-ミニアダプタと同軸RCA-ミニプラグアダプタ、それとマニュアル(英語、日本語)が入ってました。後述しますがC to Aのケーブルと充電器も入っていれば良かったかなぁと思いました。

フロントパネル側はバランス・シングルエンドヘッドホンジャックとステータスLED、Gain+ボタンにライン出力可変・固定切り替えスイッチ、ボリュームつまみがあります。ロータリーエンコーダなのでグリグリ回る他、押し込むことで電源オンオフとかしたりできます。

リアパネル側にはUSBポートが給電用と音声入力用の2つ、SPDIF(光・同軸共用)入力、ライン出力がシングルエンド、バランスで付いてあります。

本体裏側にはゴム足が着いてるくらいで特にスイッチ類は見当たりません。対応フォーマットが誇らしげに記されています。何というかこうやって本体をまじまじと見ていると形といい色といいそしてAngelというネーミングってあたり、何となくiFi audioのiDSD DIABLOを意識したんじゃないだろうかと思ったりします。

使い方

Angel本体とPCやスマホを音声用のUSBポート、もしくはSPDIF端子に繋ぎ、ボリュームつまみ長押しで電源オン。そのままつまみをグリグリ回せば音量調整です。この時つまみを一回押しでミュートになり、もう一度押すと以前のボリュームまでフェードインします。ボリュームはデジタル制御でガリノイズやギャングエラーが皆無で、ステップも細かいためIEMイヤホンでも使いやすいです。Gain+を押すことで音量が上がるいわゆるハイゲインモードの切り替えができます。

電源オンオフとジャックの抜差しのたびボリュームが最小になる仕様のようで、聴き比べの時とか正直面倒くさいと思いつつもハイパワーなアンプなので突発的な大音量を出さないための配慮だと考えるとまぁしゃーないかなと思います。*1

Angel本体後部のライン出力を使用する際、フロントパネルの切り替えスイッチで音量可変・固定切り替えができ、プリアンプとして使うことも可能です。

Angel本体を充電する場合は給電用USBポートに繋ぐワケですが、気をつけておきたいのがUSB Cto Cケーブルでは充電ができず、C to Aケーブルが必要な点です。最初箱から出した時バッテリーが切れていたので付属のC to Cケーブルで充電しようとしたところ全く充電ランプが点かず(充電時は青く点滅します)、初期不良引き当てたかと焦りました。それで手元にあったC to Aケーブルと充電器を使うことで充電ができました。このあたり説明書にも書いてなく付属ケーブルもC to Cのやつしか入ってなかったのでちょっと不親切かなぁと思いました。

それと試しにSPDIF入力にBTA30Proを使い同軸でDoP信号を送ってみたところ見事にノイズしか聴こえませんでした。つまりDSDはUSBのみ対応ということです。

音質

ゼンハイザーHD660S、IE600とかUE Reference Remasterdなどで聴いてみました。EarMen Angelの音質を一言で表すならスッキリ高解像系で、奥行きが感じられるサウンドでしょうか。アタックとかディテールの表現も細かいんですが音色の表面がくっきり聴き取れるくらい解像感が高いです。これまでぼやけて聴こえてたのがAngelを通して聴くことでハッキリ見えるようになった感じです。評論家の方がたまによく表現に使う「ヴェールを1枚取り去った」ってのは正にこんな感じなんだろうかと思いました。音色そのものに厚みや艶を持たせるタイプではないものの高解像系にありがちな音色そのものが痩せ細るという事がなくしっかり鳴っている感覚があります。

さらにAngelでは音楽を構成してるパートや環境音といった1つひとつの要素がそれぞれのレイヤーを持ち、それらが奥行き方向で重なり合ったかのような鳴り方をしています。端的に言えば分離が良いというやつですが、ここまで具体的にイメージ出来る鳴り方を聴いたのは初です。

空間表現は左右にそこまで広がりを持たないものの奥行き方向にはぼちぼち広いため、前方にちょっと離れた所での演奏を聴いてる感覚があります。

さすがのハイパワーというだけあってHD660Sでも音量はもちろん十分に取れて音痩せせずにしっかり鳴ってる感じがします。Angel自体が音源に演出を加えず、十分な解像感とパワーのある音を出すのでイヤホン・ヘッドホンの個性が際立ちます。IE600ならシャープなサウンド、Hook-Xなら柔らかめ、A5000なら煌びやかな高域、といった具合に機種ごとの特色が掴みやすいです。色々と聴き比べが捗るかと思います。

UE-RRみたいな個性薄い系と組み合わせるとなんかミネラルウォーターや吟醸酒のごとく耳に音楽がスルスルと入ってくる様であり、音源に手を加えずありのままを聴くって感じです。焼き鳥で言うところの通は塩で素材の味を楽しむみたいな聴き方です。高音質音源ならその良さを存分に味わえる一方でそうでない音源だとノイズや音割れなどの不具合が目立ったりいまいちパッとしないので、何か不具合を隠しつつ演奏をより楽しく聴ける演出が欲しくなります。通はタレです。

ライン出力でも同様な音質傾向のようで、手持ちのSTAXシステム(SR-L500+SRM-353X)と組み合わせることでSTAXイヤースピーカーの持つ柔らかく繊細なサウンドとAngelの奥行きのある高解像感がいい感じに作用して演奏に生々しさを感じさせてくれてかなりいい感じです。ポータブルのSRS-002との組み合わせでも同じようないい感じのサウンドだったので個人的にはSTAX製品と相性が好ましいと思いました。

最後にGain+スイッチは単に音量が増えるだけでなく音質も向上するとあったので聴いてみたところ、周波数バランスや空間表現が変わった感じはしないのですが音が若干太くなったというか押しが強まった気がします。個性薄い系のイヤホン・ヘッドホンでもっと聴きごたえのある音が欲しい時に使えるかと思います。もちろん音量も上がりますのでパワーが欲しい時にも使えます。ただしホワイトノイズが増えるので一部の高感度イヤホンだと気になるのとAngel本体がそこそこ熱くなるので注意が必要です。

まとめ

というワケでEarMen Angelの紹介でした。見た目は昔ながらのポタアンで機能もシンプルでとりあえず挿せば動くという使いやすい製品です。音質の方はスッキリ高解像でありパワーも十分ありでイヤホン・ヘッドホンの個性を引き出すサウンドで、とりあえずコンパクトな卓上機として何でも鳴らせるアンプが欲しいって人におすすめです。また持ち運びも容易なので店頭やイベント会場で新製品の聴き比べする用途にもうってつけだと思います。実際使ってて捗ってます。

最後に、私は当初Angelの製品情報をネットで見た時はスペックはありきたりで、見た目も青い以外普通のアンプなのでさして気にも留めてなかったのですが、冒頭に書いてあった通り店頭試聴機を何気なく聴いてみたところ一発で聴き惚れて結局買ってしまいました。今までは試聴はしつつも使い勝手だとか奇抜な技術だとかで音質以外の要素も購入時の判断材料としていたのですが、Angelの場合は純粋に音だけで気に入って買いました。正直ポタアンはもう要らないしそれより据え置き機が欲しいとかの雑念は好みの音質の前に消えて無くなりそして気づけば手元に天使が降臨してました。

見た目やスペックがいまいちパッとしなくても実際に音を聴くことでその製品の魅力が窺い知れる点で改めて試聴の重要さを認識しました。その結果、財布の紐が緩んで思わぬ出費が生ずる点で改めて試聴の恐ろしさも思い知らされました。

買ってよかったです。おわり

*1:なお、ライン出力ジャックに接続中の場合はヘッドホンジャック抜き差ししても音量が最小にならないので注意が必要です(一敗)。